本ページ内容は、米国アリゾナ州フェニックス日本人向け雑誌「オアシス」に掲載されたコラムを許可を得て転載しています。テーマ以外のことも多く書かれていますが、松久先生の人柄も皆さんに良くわかっていただきたいと考え、小見出しを付け加える以外はそのまま掲載しました。

絶望から希望の光へ   排尿機能麻痺の一患者

整形外科医から現在のカイロプラクティックドクターに方向転換した理由は、現代西洋医学の治療に希望を失った、または失いかけている人々、または、どうしても手術だけは受けたくないという人々に、薬も手術も用いずに、自分の手によって、希望を与えるという使命感でした。

日本で整形外科医として10年間、手術、投薬に明け暮れた日々を経て、2000年にアメリカのカイロプラクティック大学入学、4年間学んでDoctor of Chiropractic (DC) を取得した後、2005年春より、手による自然治療のみで皆さんの健康と元気に貢献することを喜びとしてきました。

現在の時点で、私の患者さんの約7割が日本人の方(日系アメリカ人も含む)で、残りの約3割がアメリカ人(主に白人)の方ですが、皆さんに対し、本来人間が持つ生命力、自然治癒力を妨害しているものを除去し、それを最大限に発揮させるという治療を行ってきました。

その診療の中で、整形外科医として依然、活動していたら決してお助けすることができなかったであろうと考えられるケースが沢山存在しました。薬、注射や手術で治らない症状を救うこと、または、手術を受けたくない方を救うこと、が私の最大の喜びとなりました。

症例:腰椎椎間板ヘルニアの神経圧迫による重度膀胱障害

今回は、私がお助けすることができた方々の中から、一人の患者さんを紹介させていただきます。69歳の白人アメリカ人男性です。彼は暖かいお心をもった、私の日本人患者さんの一人によって紹介されてきました。

彼は、数年前に強度の腰痛、坐骨神経痛に対し、腰椎の手術を受けました。一時痛みは軽快するも、すぐにまた痛みが戻り、二年前には尿の排泄が自分でコントロールできない膀胱排尿障害が出現しました。

それらの症状にて複数の医療機関を受診するも、緊急に手術が必要といわれた彼は、一度手術でいやな思いをしたこともあり、拒絶し続けたそうです。その間に、尿漏れの症状は日に日に増悪し、尿が出る感覚が全くなくなってしまったわけです(腰椎椎間板ヘルニアによる神経圧迫による重度膀胱障害)。

歩行に関しても、下肢に全く力が入らずに数歩歩くとそれ以上前には進めなくなっていました。私のクリニックを最初に訪れた際には、上記の症状の他に、極度の腰痛で完全に前のめりの姿勢になっていました。

彼によると、担当の医師には緊急に手術をするしか方法がないが、それでも改善する見込みは非常に少ないといわれていました。

排尿感が戻り歩ける喜び

ラストホープとして私に賭けた彼ですが、一回目のアジャストメント治療で腰痛が激減し、直ちに姿勢を真っ直ぐに歩けるようになりました。彼の妻は、そのような姿勢で彼が歩くのをここ数年で初めて見たと語りました。

最初の週は3度来院し、3度のアジャストメント治療を行いましたが、その後より彼の排尿の感覚が戻ってきました。

初診後3週間目で、夜の尿漏れが無くなったとの報告を受けました。下肢の皮膚色も青白色から赤みがかった良い色に変わり、下肢筋力も徐々に戻りつつあります。

毎回クリニックで見る彼の顔には、満面に笑顔が溢れ、絶望は消え希望に満ち溢れています。それこそが、私の最大の喜びなのです。