本ページ内容は、米国アリゾナ州フェニックス日本人向け雑誌「オアシス」に掲載されたコラムを許可を得て転載しています。テーマ以外のことも多く書かれていますが、松久先生の人柄も皆さんに良くわかっていただきたいと考え、小見出しを付け加える以外はそのまま掲載しました。
一生のうちで殆ど誰でもが経験するのが、"ぎっくり腰"です。これは、ある動作、姿勢が引き金になることもありますが、逆に特別な原因らしきものがなく起こることもあります。
医学的には、"急性腰痛症"または"腰椎(腰部)捻挫"といわれ、急激に起こる腰部の激痛を示し、ひどいと歩けなくなったり、立っていられなくなります。
通常、病院の救急部(Emergency)に行くか、整形外科の急患として受診する人が多いのが現状ですが、いわゆる"ぎっくり腰"では、レントゲン撮影をしても特に原因となるものは見出されないので、治療法としては痛み止めの薬が処方され、家で休養されるように言われてしまいます。言われたとおり、痛み止めを飲み、休養すれば、殆どの場合、時間と共に軽快するため、あたかも治ったような感覚になり、後はそのまま放置してしまいます。
痛みがひどい場合は、病院、整形外科にて腰椎の椎間関節(背骨の後ろにある小さい関節)に、鎮痛消炎剤とステロイド薬の混合したものを注射し、それにより痛みを軽減させるという方法がとられます。この方法は、飲み薬よりは効果が強いものですが、望むような結果が得られない場合もあります。
飲み薬にしても注射にしても、痛みを化学的に強引に抑えているにすぎません。
確かに、仕事や学業のため、至急に復帰する必要があるときは、これらの方法により一時的に痛みをとってやることが重要になります。しかしながら、腰を根本的に治す、再発を減らすように予防する、といった観点から考えた場合、腰痛の根本的原因となっているものを治す必要があります。
皆さんはよく、"この痛みは筋肉だ"、"スジだ"、"筋膜だ"のように、痛みの性質を想定しますが、痛みというのは全て神経が関係しています。
つまり、異常信号を出している神経を見つけ出し、それを正すことが、理想的で根本的な考え方なのです。
腰の背骨である腰椎は5つの骨(椎体)からなっており、その直下に土台となる仙骨、その両側に骨盤(腸骨)があります。それぞれの骨からはそれに対応する繊細な神経が突出しており、それら神経はそれら骨に近接した状態にあるわけです。
捻った、姿勢が悪い、繰り返し動作、物を持った、など、何らかの原因で腰に物理的ストレスがかかると、骨と骨の間で異常な力が働き、それにより近接する神経に異常なストレス(圧迫、牽引)がかかってしまいます。こうなると、その神経の支配する筋肉、筋膜、関節に痛みとなって現れるわけです。
もちろん、スポーツ選手などが筋肉を直接損傷する場合もありますが、この状況においても、神経の異常が存在するならば、その支配筋肉がより損傷を受けやすい状態にあったと考えられます。
ですから、この神経の異常を起こす背骨の異常を治すことが、痛みの原因を根本的に治し、また、その予防につながるわけです。今までの医学は、表面的な治療に偏っていましたが、これからは、症状、病気を起こす根本的な原因を除去していくことにより、最大の健康を獲得していく時代になってきました。
∗米国アリゾナ州フェニックス日本人向け月刊雑誌「オアシス」に書かれた松久医師のコラムより